2022.01.25 UP

kippis mag. キッピスの「分け合う」webマガジン no.3

kippisベビーボックス寄付
優しさを、行動することで見える化する。
kippisは日本のパパとママを応援します

kippisベビーボックス寄付 優しさを、行動することで見える化する。kippisは日本のパパとママを応援します
kippisデザインのベビーアイテムやおむつなど、全14アイテムが入ったボックス。「北欧柄で子育てを楽しく!」がコンセプト。

kippisブランドマネージャーの根本です。
今回kippisは、北海道東川町の新生児が生まれた家庭に、ベビー用品やおむつなどがセットになった「ベビーボックス(子育てボックス)」を寄付することになりました。kippisデザインのスリーパーやスタイ、ブランケットなど、全14アイテムが入っています。東川町で作られた木工の町ならではの木製の乳歯入れも一緒に入っています。
プレスリリース配信後、メディアの反応は、「なぜベビー用品を寄付するのか?」「なぜ東川町に決めたのか?」という、2つの「なぜ?」でした。今回はまず、その一つ目の「なぜ?」に回答しようと思いますが、そのためには、現在6才男児を育てている私自身が、北欧デザインの仕事をするなかで出合ったフィンランドの福祉政策についてお話しする必要があります。少しお付き合いいただければと思います。

かゆい所に手が届く!かつ、おしゃれなフィンランドの「育児支援パッケージ」

kippisのベビーボックスのお手本になっているのは、フィンランドの育児支援パッケージです。手厚い福祉制度で知られる北欧ですが、フィンランドの育児支援パッケージはそれを象徴する制度で、子どもが生まれると国から実に約50点もの育児アイテムが贈られるというものです。ベビー服、寝具、絵本、ぬいぐるみ、お風呂用温度計、ヘアブラシ、ママ用のブラパッド……。確かに産後必要だわ……というラインナップ。かつ、北欧デザインのおしゃれなものばかりです。センスがよくて気の利いたママ友が選んだ、みたいなラインナップです。

kippisベビーボックス寄付 優しさを、行動することで見える化する。kippisは日本のパパとママを応援します
フィンランドの育児支援パッケージは、箱自体もベビーを寝かせるベッドとして使えるようになっている。もらうには、妊婦検診を受けることなどが条件。妊産婦と乳幼児の死亡率の低下に大きく貢献している。
Photo:Kela Annika, Söderblom

育児支援パッケージが子育て家庭にもたらすものとは

もちろん、日本でも何も支援がないわけではありません。ベビー用品やおもちゃなどを買うためのクーポンや祝い品を配っている自治体は結構あります。でも、実用的なベビーグッズをそろえて配布するというのは、かなりレアケースでした。せっかくくれるならお金のほうがいい、物は自分で選びたい、という現実的な親が多いためなのではと思うかもしれませんが、こと出産準備にあたっては、その意見は変わってくるような気がします。

私が長男を産んだときのことです。40歳になる直前で妊娠。高齢出産でワクワクよりドキドキ、ザワザワのほうが大きい妊娠期間でした。
出産の3か月ほど前だったでしょうか。そろそろ出産準備をしなければ……、と産院から渡されたハンドブックや雑誌で情報収集してみると、「産褥ショーツ」「短肌着」「おむつカバー」「搾乳器」……。初めて見るワードが並んでいます。どのタイミングで何に使うものなのか、全くわかりません。親に聞いても、「私の時代とは違うわね」などと一緒に悩み始めたり、ネット検索してみれば「この商品は使えない」「こっちのアイテムがいい」などの口コミの嵐でさらに迷ったり。では赤ちゃんグッズのお店で経験豊富な店員さんに聞こうと行ってみると、もう忙しそうで話しかけるのも申し訳ないぐらいな感じ。出産準備は、「本当に、これでいいんですか……?」とハテナマークを何個も頭に浮かべながらなんとかやりましたが、妊娠後期の重い体で、この行為をするのは本当に苦痛でした。なんでもいいから、適当にいい感じのものをワンセットもらえないかな……?と、誰に伝えたらいいのかわからないやり場のないもやもやが渦巻きました。

フィンランドの育児支援パッケージは、実は同等の現金(170ユーロ)での支給を選んでもOKという2択らしいのですが、第一子を産むほとんどの人が育児支援パッケージを選ぶそうです。出産準備が、子育てにおける難所の一つであることが、この選択に表れていると思います。

子育てにはいくつもの難しい局面があり、乳児のときは子どもが寝てくれない、授乳がうまくいかない……など、心が折れるタイミングが無数にあります。出産前にどんなに頑張り屋の女性でも関係なく、産後うつは一定の確率で起こり、虐待も起こっています。自治体の子育て支援や、児童相談所があっても、これがゼロにできないのは、基本的に子育ては各家庭内で行われ、他人には手が出しにくいものだからです。さらに、出産準備に関する知識も経験もないとか、お金がないとか、いろいろな事情がある人だって、親になりたかったり、なってしまったりするわけです。そんなときに、差し伸べてくれる支援の手があったら、どんなに助けになることでしょう。

kippisベビーボックス寄付 優しさを、行動することで見える化する。kippisは日本のパパとママを応援します
東川の保育園の園児と箱詰め作業をしました。東川町で2022年に生まれる赤ちゃんの家族に送られます。

出産準備は、純粋に外部から手を出せる部分です。
これから親になる人に、物を集めるために苦労させる必然性はどこにもないし、産後のさまざまな悲しい事件をなくそうとするなら、実効的で、具体的な策が必要だと思います。フィンランドの育児支援パッケージは、その一つなのだと思います。

kippisのベビーボックスに入っているのは、ベビーアイテムだけではありません。親御さんに便利に使ってもらえるものも入れました。親御さんも自分のことをいたわってほしい、大切にしてほしいという思いがあるからです。

こと、日本においては、親に対して、特に母親に対して厳しい目が向けられがちです。
ベビーカーで電車に乗ると、舌打ちされるのは都会の「あるある」ですし、母親なら当然〇〇できるだろう、という根強く残る母性神話に、心乱される女性も多いでしょう。そしてこのコロナ禍、親が子どもに対して「するべきこと」は増えました。でも、世の中の人が全員親に対して厳しいわけではありません。否定的な声は常に大きくなりがちですが、優しい目で見守っている人も多いよ、ということをkippisは知らせたいのです。

親へのエールや優しい目線が存在すること、それは口に出したり、行為で表さない限り、存在しないことになってしまう。ただ思っているだけでは、残念ながら見えないままです。前向きな思いが見える化されて、多くの人に伝わるように。確かにそこにあるはずの優しさや寛容が、否定の声でかき消されないように。kippisは行動することを決めました。今はまだささやかな私たちのアクションですが、その思いが確かに誰かに届くことを願ってkippisは歩みを進めていこうと思います。

次回は、kippisが寄付をすることに決めた東川町のことをご紹介します!

文:根本江利子(kippisブランドマネージャー)

協賛企業一覧※あいうえお順

株式会社アセット、一広株式会社、川辺株式会社、クラシエホームプロダクツ株式会社、彩之葉昭島株式会社、大王製紙株式会社、株式会社ダリヤ、株式会社ツクリエ、株式会社リンクライン

取材メモ

・東川町の人口推移(1994年~)
北海道東川町では1994年から2018年の間で人口が約20%増。子どもは1.6倍で増加!恵まれた自然環境も魅力で、「羽衣の滝」や「大雪山旭岳」があります。さらに、2015年に日本初の公立日本語学校「東川町立東川日本語学校」を開校。外国人の人口は開校前の2014年に比べて3倍以上に増加。